|
◆ 日本の保健医療制度の弱点
1992年に他界した父が長期入院していたこともあり、当時の日本の保健医療制度の弱点が、患者とその家族に重くのしかかっていたことは忘れられません。
重病で入院しても3ヶ月ごとにその患者診療報酬が引き下げられるので、3ヶ月毎に転院を勧められました。父を引き取ってくれる病院を求めて、随分走り回ったものです。
やっと受け入れてくれた老人病院は、6人部屋でしたが、差額ベットでした。
基準看護の病院でなかったので、24時間の付き添いが付き、この付き添い看護の費用(20〜30万円くらい)は申請すれば、2ヵ月後位に戻ってきましたが、差額ベットは自己負担でした。
うろ覚えですが、差額ベット代は一日1500円程度で合計4万5000円支払ったと思います。他の医療費に関しては老人医療で、ほとんどかからず、とても助かりました。
◆ アメリカの医療費事情
アメリカの医療費に関して、2004年に2ヶ月弱入院後、他界した義父の場合を話します。
彼は膀胱がん(1996年手術後、数年間隔で3回ほど化学療法を受け、当時はがんは消えておりました)、心臓(ペースメーカーが入っていた)、肺気腫の持病がありました。
普段は薬のみでしたが、2004年5月末に肺炎を起こし、ICU(集中治療室)に2週間入院。ICUから普通の病室に移り、1ヶ月位治療をしていましたが、肺の機能が著しく悪化し、普通の生活に戻れないと医者から告知され、以来食事、延命措置を拒否して7月初めに亡くなりました。
この医療費ですが、ICU、プラス1ヶ月間の入院で$400,000.00(約4千万円)かかったわけです。
義父はラッキーなことにメディケア――老人医療、アメリカでSocial Security Taxを10年=40単位=支払った人は、メディケアA,B(Aは無料、Bは一人あたり月1万円ほど掛け金を払う)を受給できる――があり、メディケアがカバーしない医療費を支払う保険(サプリメントインシュランス。これは月たしか一人あたり4万円)にも入っていたので、自己負担はゼロでした。
毎月の掛け金は結構大変でしたが、それを支払い続けることができていて、そのベネフィットを使うことができた義父の場合はとても恵まれていたといえます。
例えば義父が6ヵ月以上入院だったとしたら、メディケアとサプリメントがカバーしない金額がかなり出てきて、かなりな負担がかかったことでしょう。
私に関して言えば、1996年に手術をして3日間入院しましたが、入院費は100%保険がカバー、手術代、医者代の自己負担も確か3万円位ではなかったかと思います。これも良い医療保険に加入していたおかげです。むしろ日本で手術したより安くあがったと思います。
◆ 医療の切捨て
私や義父はキチンとした医療保険に入ることができ、治療自体もそれ程複雑なことにならなかったラッキーな場合です。
保険でカバーされずに、家を売ったとかいう話はよく聞きます。アメリカの医療保険会社がコントロールする医療の切捨て(普通分娩の場合は24時間で退院など)はすごいものがあります。
それを十分承知して、その悪いシステムを国民皆保険という素晴しいシステムを持っている他国へ押し付けようとするアメリカ、特にヘルスケアの改善をお題目としているヒラリー・クリントンの夫(当時大統領)が、この医療保険会社の片棒を担ごうとしたことに、本音と建前の矛盾を感じるのは私だけでしょうか。

▲ 近くの公園からタンパ湾を背景にダウンタウンを見る
◆ 補足・メディケアのこと
☆ メディケアとは?
アメリカ連邦政府発行の老人医療保険です。65歳以上のアメリカ市民、或いは永住権保持者の本人か配偶者が10年以上Social Security Taxを払っていれば、 受給資格が与えられます。
☆ メディケアの種類
・1. パートA(病院保険)
入院に対する保険。必要条件を満たしていればこの保険の掛け金は無料ですが、。(入院の際に病院から一部負担金を求められることもある。)入院の他にSkilled Nursing Facility Care、ホームヘルスケア、ホスピスなどもこの保険の対象。
・2.パートB(外来保険)
医師の診療、外来診療、パートAがカバーしない医療業務(physical and occupational therapists, 検査など)に対しての保険。この保険の掛け金は月々70ドルが自己負担。(2006年現在)
☆ メディケア受給の条件
受給資格に到達する65歳の時点で、少なくとも10年はメディケア税を納めたアメリカ市民か永住権保持者。自営業者は、毎年メディケア税を政府に収めていること。 (*夫婦のいずれかが上記に該当していればよい)
* 夫婦どちらも、10年未満しか、メディケア税を納めていない場合:メディケア税を納めている期間によってメディケア・パートAにも、月々の保険料が掛かります。(189〜343ドル位)これに、有料のメディケア・パートBの負担を加えると毎月かなりな金額になります。
☆ メディケアでも医療費は無料ではありません
パートAとBの両方に加入していても、政府が定める自己負担金を病院、医療施設、医師に支払う義務があります。メディケアホームページに金額が詳しく説明されています。長期入院などの場合はかなりな金額になります。
この対策としてサプリメント、メディギャップ、メディケア・チョイスと呼ばれているメディケアの補助的保険があります。
この補助的保険はメディケアが要求する治療費自己負担金や処方箋薬剤費を全額又は一部支払ってくれます。ブルーシールド・ブルークロスなど大手医療保険会社が発行しているもので、月々の掛け金は選んだプランによります。会社によっては退職後無料でこの保険を提供してくれるところもあります。
(くらかね通信 No.134 : 2008.01.21 より転載、一部改稿)
◆ 参考文献:
『病院の内側から見たアメリカの医療システム』 第2版
河野圭子著 新興医学出版社刊、2,310円(税込) 2003年04月発行
ISBN 978-4-88002-159-1
* 著者の河野圭子さん(医療経営学修士)は上記の『キーライム通信』発行に協力し、サポートしている仲間のひとりです。
|
|