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高齢化対応事業(ついの住まい探検隊)
 ● 《事例レポート》 体験記・高齢者介護
 実父が高齢者専用賃貸住宅に入るまで
宮川朋子(正会員、JICA勤務)
父の介護、続いて夫が…

年初に実父(80歳)が、高齢者専用賃貸住宅(高専賃)に入居した。
実父は、4年前に喉頭摘出手術をしたため発話ができない(障害3級)。実母が10年前に他界して以来、手術後も自宅で一人暮らしを続けてきた。しかし、おととしから高齢者うつ病を発症、背骨の圧迫骨折も重なり、とうとう昨年2月に我が家につれてきた。

当初の主治医の指示は、「絶対に一人にしないこと」。しかし、幼児2人を保育園に預けている共働き世帯の我々にはそれは不可能。そこで、平日の日中はデイケアに通所することにし、その経費は「治療のため」として医療費でみてもらった。浮いた介護保険給付限度額内で連日夕方からヘルパーさんに入ってもらい、我々夫婦のどちらかが子どもたちを保育園から連れて帰ってくるまでの間の父の「見守り」をお願いした。

定期的に通うデイケアと、我が家での規則正しく(正しすぎる?)規律厳しい(禁煙・かなり禁酒)生活のおかげで、父は順調に回復した。介護度も要介護2から要支援2まで下がった。今父に、我が家に連れてこられたときの経緯を聞いても何も覚えていないという。それほど、当初の精神状態は異常だったらしい。

ところが、父が回復するのと引き換えに、同居している旦那の調子がおかしくなった。以前から育児や介護に協力的で、父の世話にも協力的だった自慢の旦那であるが、そんな「優等生」だからこそか、父との同居が彼にとっては想像以上の負担だったのだ。冬至の頃には、ひとつ屋根の下で暮らし続けることが難しいまでになってしまった。


父の高専賃入居

泣きながら相談したケアマネージャーから、「高齢者専用賃貸住宅」の存在を教えてもらったのはそのときであった。それまで特養やらケアハウスなどの高齢者施設・住宅の名前は知っていたものの、それぞれの違いを理解していなかった。曲がりなりにもAFPの資格を持っているのに恥ずかしい限りである。

ケアマネの紹介してくれた高専賃(「プライエボーリ湯澤」、さいたま市西区)は、当然ながら通常の施設と比較したら自由のある普通の賃貸住宅である上に、年中無休で介護有資格者が常駐し、食費を払えば3食が提供される。今までどおり介護保険のサービスも受けられる。さらに、父の年金受給額でも十分まかなえるリーズナブルな家賃なので自宅を手放す必要もない。場所も、父の家と我が家との中間にあり、隣は主治医の家である。

本来ならば、他の高専賃と比較・検討のうえ決定すべきである。しかし、時間がない上に、この好条件である。客観的にみてもこれ以上の場所はないと思われた。

当初、この話を持ち出したとき、当然ながら父はショックを受けたようだ。しかし、不本意な形で我が家につれてこられた父はいつか自分の家に戻ってまた一人暮らしをしたいと願っていた。そんな彼にとっても、この話は「渡りに船」であったようで、あわただしい形での引越しとなった。


わかりにくく、使いづらい介護保険制度

幸か不幸か、今回の件で、同世代と比較すると(?)多少は介護保険に詳しくなった。父の手術後から必要に迫られて勉強してきたが、今回一時的にせよ父と同居する事態となって、介護保険のわかりにくさ・使いづらさをあらためて感じたことがあった。

たとえば、地域包括支援センターの存在。要介護→要支援と介護度がかわると、それまでの在宅介護支援センター(以下「在支」)のケアマネから地域包括支援センター(以下「地域包括」)のケアマネに替わることになる。それまでの過程で信頼関係を築いてきたケアマネとは違う人とまた一から信頼関係を築くのは心理的負担が大きい。介護対象から予防対象に変わるという意味合いから仕方がないのだろうが、利用する立場からは親切な制度には感じられない。

また、我が地域では、地域包括事業を今までの在支の業者が受託している場合が多い。民間事業所による過剰なサービスを盛り込んだケアプラン作成が問題となったので地域包括制度が導入されたとも聞いたことがあるが、今の状況は以前とどのように異なるのであろうか。以前の業者が、地域包括業務を別途受託したとして、在支業務よりもさらに幅の広い地域包括業務に実際に対応できているのであろうか。


要支援と要介護で異なる経費計算方法

さらに細かいが、要支援になるとヘルパーにかかる経費計算方法が、要介護のときとは異なることも知った。要介護のときは1時間ごとの単価だが、要支援となると週ごとの回数による単価となる。1回あたり何時間入ろうが、週1回ならいくら、週2回ならいくら、となるのだ。そのくせ、「週1回3時間お願いします」ということはできず、常識的な範囲で1回1時間だといわれた。ならばはじめから時間単位の単価としてもいいと思うのだが。さらには、週2回のプランだが都合により週1回しか利用できなかった場合でも週2回分支払わねばならないという。なぜこのような仕組なのか。

全般的な政策の流れとして、施設介護から在宅介護へと促す施策がとられている。他方、これからの介護者世代は、我々のような共働き世帯が増えてくるだろう。「同居者がいると介護度が下がる」などという話もホントかウソかどこかで聞いた。「同居」とはいえ共働き世帯にとっては、それだけ在宅介護支援を充実させてもらわなければ、介護者は息が切れてしまう。我が家は「支援(予防)」レベルであり、主治医の協力で連日デイケアを利用していたのにもかかわらず、結局は息が切れてしまったのだ。


企業も介護対策のための福祉制度の充実が必要

世間では「次世代育成支援」と称して育児支援のための福利厚生制度の充実に力を入れる企業も多い。育児に携わる者として育児支援制度が充実されるのは大変ありがたい。が、企業はそれと同じくらい、介護者のための福利厚生制度の充実を真剣に検討すべき時期にきていると思う。

介護は終わりが見えない。子どもは成長するにつれて丈夫になり自立していくので長い目で見れば手は段々かからなくなる。一方の介護対象の老人はどんどん衰えていくのである。昨日は背中が痛く、今日は血圧が高いといった具合で、通院も定期化していく傾向にある。

育児のための看護休暇制度は現在存在するが、老人のための看護休暇制度はない。通院付き添いのために有給を削って対応するには限界がある。介護休業制度はそのようなスポット的な対応には不向きであるし、何よりも「要介護者」の介護のための休業であり「要支援者」のためのものではない。平成18年度の介護保険制度改正により、「要支援」レベルの人とそれを支える家族への支援策は手薄になってしまっているように感じる。
「次世代育成のための支援」だけではなく、「親世代支援のための支援」も充実させて欲しい。


今年は・・・

昨年は父の病状悪化に始まり高専賃入居に終わった。3月には父よりも10歳以上若い義父が他界するなど終始バタバタし、正直なところ"Annus Horribilis"という印象だ。
今年こそはいい年にしたいし、なって欲しい。手始め?に6月に第3子出産というライフイベントがある。不安もあるが、様々な経験から自分という人間に深みが増すように過ごしたい。
ちなみに、旦那も今では随分元気になった。まじめ故に父への罪悪感もあるようなので、あせらずゆっくり時間をかけて旦那の状態も見て行きたいと思っている。

『くらかね通信』 No.139 : 2008.02.21、および、No.140 : 2008.02.25より転載
▲ 挿絵はえすけっとくらぶ発行『障害者・高齢者 バリアフリーイラスト・カット素材集』より


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