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生涯学習支援事業
● FPエッセー傑作選(その3)
アイポッドと携帯電話
木下利信(FP暮らしのコツ代表)
家内から昨年のクリスマスに「アイポッド」をプレゼントされました。今地球的規模で大流行のアップル社製メモリー型携帯音楽プレイヤーです。早速CDから好きな音楽をダウンロードし、イヤフォンを耳にあて楽しみました。音質も申し分なく、暮の大掃除も“調子良く”進めることが出来ました。ひょっとしたらこれが家内の狙いだったのかも知れません。

アイポッドの良さは何と言っても、その形状にあります。とても小さく軽いことから屋外行動時に持ち出して音楽を楽しめることです。正月二日、その機会がやってきました。アイポッドを聞きながら小田急線に乗り、座席に座りながら静かに眼を閉じ音楽を楽しんでいました。ふと気がつくと反対側の座席に40歳代のご夫婦が座っているのが眼に入りました。

ご夫婦は互いに顔を見合わせながら手を盛んに動かしています。お二人は聾唖者でした。この時、私は妙な罪悪感を持ちました。健常者である私はこうして四六時中好きな時に音楽を楽しむことが出来るのに、お向かいのご夫婦はこの喜びを体験することも出来ないのです。その眼の前でアイポッドを楽しむ姿を見せていることに違和感を覚えたのです。

そおっとイヤフォンを外そうと思った時、お二人は“会話”をぴたっと止め、それぞれ携帯電話を手に持ち出しました。そしてお互いの携帯画面を見せ合ったりして笑顔の交換をしているのです。そう、「携帯メール」を楽しんでいるのです。この時思いました。携帯電話は「通話」するための手段として商品化されたものです。開発者はまさか耳の聞こえない方が携帯電話を活用するとは夢にも思わなかったのではないかと。
健常者にとっても今や携帯電話は欠かせないものになっていますが、他人とのコミュニケーション手段に制限がある聾唖者にとっては生活、行動に必須の道具となっているのです。そして携帯電話を使いこなすことで、健常者との間にある心のハンディキャップを幾分でも埋めることに役立っているのではないでしょうか。

「技術の進歩は人々の暮らしを豊かにするためにある」と良く言われます。しかし、進歩した技術をそれを一番必要としている人々が使いこなせる「ユニバーサルデザイン」の思想がより重要になります。このことの“本質”を知らされた体験でした。
ファイナンスや金融・保険の世界も商品開発競争や税制を含めたルールの変更が益々多くなり複雑化する傾向です。ファイナンシャルプランナーの仕事はファイナンスの知識や技術から取り残される人々が等しくこれらの新商品や新ルールの恩恵を得られるようにガイドすることだと再認識しました。つまりファイナンスの“ユニバーサルデザイナー”というわけです。
勿論、アイポッドのイヤフォンを取り外すことは止めました。
(2006.1.7)





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